ここ最近、私の中でも一般的にも流行したギャグ漫画についてコメントしてみる。取り上げる作品は「テルマエ・ロマエ」「聖☆おにいさん」「デトロイトメタルシティー」の3作品。いちばん最近流行したのが「テルマエ〜」で、そこから「聖〜」「デトロイト〜」の順番で時代が遡る。
これら3作品は出版社や本屋によってプッシュされて漫画好きだけではなく、言い替えればキャズムを超えたレベルでヒットをした認識である。キャラクター頼みになりがちなギャグ漫画においてユニークな舞台設定を行った結果、他作品より頭ひとつ飛び抜けたという点で共通している。Webでそれぞれの感想記事などを読む限り、作家自身の背景知識や体験が舞台設定の元ネタとなっている様子である。
以下、作品ごとにコメントを書いていくのだが、書き進めていくうちに「聖☆おにいさん」だけ圧倒的にアンチが存在するらしい気配を感じた。そこを突っ込むと評論らしい文章になりそうだが、なんとなく纏まらないので別の機会としたい。ここではあくまで順番に紹介するだけとする。
さて、2011年現在最も注目されているギャグ漫画といえば「テルマエ・ロマエ」で概ね異論ないと思う。古代ローマ人の風呂に関するエピソードものを阿部寛主演でムリヤリ映画化に踏み切ったほど注目度は高い。映画は日本人キャスト?というツッコミ以上に上戸彩というキャスティングから地雷臭漂うが、主人公のルシウス以外は気のいいお爺ちゃんお婆ちゃんしか出てこない本作なのでアレンジは仕方ないのだろう。その辺は怖いもの観たさで乗り切りつつ、阿部さんのアッーな尻を楽しみに封切りを待ち望むことにする。ディルドの回は勿論再現してくれるのであろうな…。
「テルマエ・ロマエ」は私たちの身の回りの風呂文化がいかに快適かを再発見しつつ、古代ローマ人の生活との共通点を発見して感心できるという点で小賢しい内容ではある。ただ、テーマが “風呂“なのでハードルや憎たらしさのようなものを一切感じない。ただし、最近のエピソードでは世界史の授業で覚えるのに苦労したハドリアヌスやらマルクス・アウレリウス・アントニヌスが登場し、これら人物名の暗記が苦手であった私としては若干トラウマを感じるが、彼らの登場により歴史物としての読み応えが強まってきた印象を受ける。それでもあくまで風呂という基本路線は変わらないだろうが話を大きくせず素朴に続けて欲しいと願う今日この頃である。
古代ローマと現代日本を風呂を通じて結ぶ、何でそれを考えついたのか驚く一方で、ネタ切れせずにあっという間に3巻まで出たことに一番感動を覚える本作。掲載誌があのコミックビームで、単行本のおまけエッセイにかの有名編集長が頻繁に登場するのも桜玉吉の漫画を読んでいた私としてはポイント高い。そのうちトルコ風呂編とかやるのだろうか….そこまで上戸彩で映画化してはくれないだろうか….。
次に「テルマエ~」直前に漫画賞などでフューチャーされていたギャグ漫画といえば「聖☆おにいさん」であろう。ただし本作については、私がネットであちこち読んだ範囲ではアンチが多く実際にヒットしたとはいえ、その評価には賛否両論ある様子である。それとは別に内容が内容だけに実写化等はされていない。
物語は何故かTシャツにジーパン姿のブッダとイエスが都内のアパートで共同生活を営む傍ら、彼らの聖人としてのエピソードが裏話的な要素を含みつつギャグとして炸裂するというもの。Wikipedia 程度には聖人エピソードを知らないとギャグがハマらない点でかなり小賢しい。だからであろうか、それとも掲載誌がモーニング2というのが災いしているのか「サブカル臭を感じる」旨のコメントと共に嫌悪感を示す人がいる様である。現に「聖☆おにいさん サブカル臭」でGoogle先生に尋ねると他作品より圧倒的な件数がヒットすることに驚く。
私はこの「サブカル臭がする」という直感についてよく分からない。恐らく、複雑な要素を上手に抽出した上手い表現なのであろうが、これついてはもう少し具体的に解体する必要がありそうである。内容が単に小賢しくて嫌味な感じがすると言うならば先に述べたとおり「テルマエ~」だって十分に小賢しいと思うのだが、恐らくそこは重要な要素ではないのであろう。
但し、サブカル云々を除いて私見として本作に不満があるとすれば、本作は単行本が薄すぎる。これで600円はねーよ…。テルマエが800円近くすることにも十分驚いたがこちらはコラムが充実していて損は感じない。過去の読み切りでもいいからおまけ漫画くらい載せるサービス精神を検討いただきたい。
なお、「テルマエ〜」の登場ですでにオワコンと呼ばれている本作ではあるが、途中から天使とかブッダの弟子等の脇役が活躍し始めてギャグのパターンも充実しており、最新刊でも面白さは落ちてはいないと感じる。漫前述の通り単行本の価値は低い為、漫画喫茶での一気読みをお薦めする。
最後に「デトロイトメタルシティ」。本作は松山ケンイチが完璧なビジュアルをもって映画化し、地上波でもわさわさわピー音入りで放映されたほど注目を集めていたことは知っての通り。一見、クラウザーさんというキャラクター頼みのギャグ漫画に見えるが、本作でいう”デスメタル”の対極に描かれる“おしゃれ系文化”については記述が細かく、元ネタを知っているほど楽しめるという点で小賢しい。「聖〜」よりこちらのほうがド直球でサブカルを扱っているが、オチでクラウザーさんがそれらを破壊してしまうので寧ろ爽快なのかも知れない。
本作については完結しているが、後半になるにつれて“おしゃれ系文化”の元ネタ要素は影を潜め、クラウザーさんに対抗する強烈なライバルとの対決に主軸をおくようになったという点でキャラクター頼みの要素が強い。最後まで面白さは落ちていないが、元ネタでニヤリと出来なくなった点で若干寂しさを感じた。
「燃えるお兄さん」や「したたか君」を読んで育った私としてはギャグ漫画といえば破天荒なキャラクターを以下に動かすかが柱だと思っていた。こうして3作品並べてみると、キャラクター以前に、いわゆる典型的な“学園もの”や“職業もの”の枠を飛び出した”こだわり”の作品舞台が特徴であるように感じる。今後注目される作品の内容はどうか、もちろん典型的な“●●もの”の再解釈も含めて期待しつつ、ユニークな発想に注目していきたい。